解説/物語

【解説】

企業への忠誠心が真実を隠蔽し、道徳心が真実を告発した。
この文化的価値観の衝突を前に、日本のメディアは沈黙した―― 

samurai_and_idiots_still7_R2011年、雑誌FACTAのスクープと英国人元社長マイケル・ウッドフォード氏の不当解雇により、明るみになったオリンパス損失隠蔽事件。日本有数の大企業の一つとして、創業100年近くもの歴史を誇るオリンパスで何が起きたのか? 英国SFO(重大不正捜査局)や米FBI(連邦捜査局)を巻き込み、世界のメディアでも大々的に報道され、日本社会の隠蔽体質だけでなく、ジャーナリズムのあり方までも浮き彫りにした事件の内幕に迫る長編ドキュメンタリー作品が『サムライと愚か者-オリンパス事件の全貌-』である。

samurai_and_idiots_still1_R内部告発した元オリンパス代表マイケル・ウッドフォード氏自身の体験談を中心に、雑誌FACTAで事件をスクープした山口義正記者、海外メディア報道の火付け役となったフィナンシャル・タイムズのジョナサン・ソーブル記者などの事件当事者のインタビューを交え事件の全貌に迫る。20年以上に及ぶ不正経理が如何にして暴かれていったのかを解剖しつつ、日本の現実と企業のあり方に鋭くメスを入れる。

日本のメディア、報道の在り方に刃を突き付ける

オリンパス損失隠蔽事件について、当時日本メディアで大きく報道される事はなかった。しかし海外メディアでは大々的に報道され、高い関心を持って報道されていた。グローバル化が進む現代において、なぜ日本のメディアは「忖度」し、「自主規制」を課していくのか。そして事件の「その後」を報道せず、全てが風化し「なかった事」にし、「忘れていく」メディアの在り方、国民の「無関心」さをあぶりだしていく。

samurai_and_idiots_still27_R

過去の企業スキャンダルを通して、日本の社会構造に斬り込む

日本有数の大企業の一つとして、創業100年近くもの歴史を誇るオリンパスで何が起きたのか?20年以上に及ぶ不正経理が、如何にして暴かれていったのかを解剖しつつ、日本社会に蔓延する絶対的肯定に裏付けされた忠誠心、権威に対する脆弱な態度、そして偏狭的なまでの価値感に鋭くメスを入れる。あらゆる分野でグローバル化が謳われる中、確実に取り残されていく日本に、適応する余地はあるのか?samurai_and_idiots_still5_R

「共謀罪」法が成立し言論の自由が揺るがされ、森友学園問題、加計学園問題などいまだ隠蔽体質がはびこる日本の社会構造。様々な問題が浮き彫りになるにも関わらず、選挙の投票率は下がる一方で日本国民の危機感のなさ、関心のなさは顕著である。信念と勇気を持って立ち上がったサムライ達と、疑問を抱くことなく卑怯にも不正を幇助したイディオット(愚か者)達。これはその戦いの記録である。

マイケル・ウッドフォード氏、国内外のジャーナリストの目を通し多角的に分析!

samurai_and_idiots_still19_Rバブル時代以降、1997年の山一證券崩壊、アメリカ史上最大の企業破綻となった2002年のワールドコム破錠、2004年のカネボウ粉飾決算事件、2006年のライブドア事件、そして世界的金融危機の発端となった2008年のリーマン・ショックなど、次々と金融界を揺るがした経済スキャンダルの一つとして新しいページを刻むことになったオリンパス事件。内部告発した元オリンパス代表マイケル・ウッドフォード氏や、雑誌FACTAで事件をスクープした山口義正記者などの事件当事者だけでなく、金融アナリスト、政治家、企業家、経済エコノミスト、海外ジャーナリストなどのインタビューを交え、歴史的な背景も踏まえて事件の全貌に迫る。ひとつの事件を多角的な視点からみつめる事で、真実を導き出し、観客に問いかけを投げかけていく。

 

国内外の先鋭スタッフが終結し、待望の日本公開!

samurai_and_idiots_still6_R監督は、短編がロッテルダム映画祭やトライベッカ映画祭などの数々の国際映画祭で評価され、本作が長編デビューとなる山本兵衛。プロデューサーには、BBCのプロデューサーで『マン・オン・ワイヤー』ではアカデミー賞を授賞し、100本以上のドキュメンタリーを手がけているニック・フレイザーや、日本から『TAIZO〜戦場カメラマン・一ノ瀬泰造の真実〜』(2003)などのドキュメンタリーも意欲的に手がけている奥山和由を迎え、世界を代表する放送局BBC(イギリス)、ARTE(フランス)、ZDF(ドイツ)、SVT(スウェーデン)、DR(デンマーク)が協力し、国際共同制作として完成。音楽には、Saycetとして来日公演も行なっているフランスのエレクトロニカ・アーティスト、ピエール・ルフェブが初のサントラを担当している。ヨーロッパで放映され大反響を呼んだ問題のドキュメンタリーが遂に日本上陸。

【オリンパス事件 年譜】

2011年 04月                  イギリス人マイケル・ウッドフォードが社長に就任

2011年 07月                  月刊FACTAに第一弾の暴露記事が掲載される

2011年 09月                  月刊FACTAに第二弾の暴露記事が掲載される

2011年 10月14日         社長兼CEOマイケル・ウッドフォード解任

2011年 10月15日         英フィナンシャル・タイムズにオリンパス不正疑惑の記事が掲載される

2011年 10月18日         日本メディアが海外メディアを引用して不正疑惑を報道し始める

2011年 10月26日         オリンパスは不正疑惑を一切否定し続けるが、ウッドフォードの前代社長で、解任後の後任であった菊川剛会長が辞任/高山修一新社長が就任

2011年 11月01日   不正疑惑を調査するための第三者委員会が設置される

2011年 11月08日   高山修一社長が記者会見にて損失隠蔽を認める

2011年 11月10日   東京証券取引所はオリンパスを監理銘柄に指定

2011年 12月06日   第三者委員会が調査結果を発表

2011年 12月14日   オリンパスは大幅に遅れて中間決算発表し、上場廃止を免れる

2012年 02月16日         菊川社長、森前副社長、 証券会社元取締役を含む7名が逮捕される

2012年 12月            損失飛ばしスキームのシンガポール・ルートを幇助した元コメルツ銀行職員がアメリカで逮捕される

2013年 07月            東京地裁は菊川前社長に懲役3年執行猶予5年、森久前副社長に懲役3年執行猶予5年、前常勤監査役に懲役2年6ヶ月執行猶予4年、法人であるオリンパスに罰金7億円の判決を言い渡した

2014年 12月                  東京地裁はフィナンシャルアドバイザーの1人に対して金融商品取引法違反の共同共謀正犯の罪では無く幇助の罪にとどまる事を認定し、懲役1年6月執行猶予3年と罰金700万円の判決を言い渡した

2015年 02月            アメリカ証券取引委員会(SEC)が、損失隠しに関わった米国在住の外部関係者に対し司法取引を求める。

2015年 07月            旧経営陣に損失隠しを指南したなどとして、金融商品取引法違反罪などに問われた元投資顧問会社社長ら3人に有罪判決が言い渡される

2015年 10月23日   指南役と呼ばれながらアメリカに逃げおおせていた佐川肇氏が東京地検特捜部によって在宅起訴

2016年 01月15日   いったんは和解したもののマイケル・ウッドフォードがオリンパス社を英国の裁判所にて契約違反で提訴する

【近年の主な粉飾決算・虚偽記載事件まとめ】

1998年3月  山一証券      2700億円の損失を簿外処理

1998年11月  三田工業      債務超過を隠して違法配当

1998年11月  ヤオハンジャパン  130億円の損失を隠して違法配当

1999年6月  日本長期信用銀行  不良債権3130億円の損失隠し(無罪確定)

1999年8月  日本長期信用銀行  不良債権1590億円の損失隠し(無罪確定)

1999年12月  ヤクルト      クレスベール証券から購入したブリストン債で出た損失を隠す

2005年3月  西武鉄道      親会社コクド保有株を個人名義とする虚偽記載

2005年8月  カネボウ      赤字子会社の連結外しなどで債務超過を隠す

2006年3月  ライブドア     子会社に対する架空売り上げなどで利益水増し

2011年7月  オリンパス     1400億円の損失隠しが発覚

2015年7月  東芝        1518億円の利益を水増しする粉飾決算を行っていたことが発覚

samurai_and_idiots_still22_R

samurai_and_idiots_still31_R

オリンパス損失隠蔽事件とは

世界に誇る技術力を持つオリンパス。1990年代バブル期に財テクに力を入れた事で損失が膨らみ、海外ファンドなどに移し替える「飛ばし」(※)を1998年に始めた。過去の企業買収時に支払った約1400億円の巨額マネーは、この損失隠しに利用されていた。20年近くに渡り隠蔽されていた損失隠しは、2011年に月刊「FACTA」で掲載された山口義正記者による不正告発記事が、当時社長だったマイケル・ウッドフォード氏の目に止まり、前社長で当時会長だった菊川剛氏に説明を求めたところ、突然解任されたことで不正の存在が表面化世界の株式市場に激震を走らせた。

過去の粉飾事件で摘発された会社が巨額の損失を抱えていたのと比べ、オリンパスは既に損失の穴埋めが完了し、業績も好調であった。一部の経営陣が中心となり、外部協力者が飛ばしの受け皿なるファンドを設立し、損失穴埋めのための企業買収にかかわって、多額の報酬を受け取っていた事が確認されている。

2011年12月21日、東京地検特捜部と警視庁捜査二課、証券取引等監視委員会の三者合同という異例の体制で強制捜査に着手。特捜部は、オリンパスの菊川前社長(元会長)、森前副社長、前常勤監査役、証券会社の元取締役の4名を、警視庁捜査二課が、投資会社の社長、取締役、元取締役の3名を、金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載罪)でそれぞれ逮捕した[

2013年7月、東京地方裁判所は菊川前社長に懲役3年執行猶予5年(求刑:懲役5年)、森副社長に懲役3年執行猶予5年(求刑:懲役4年6月)、前常勤監査役に懲役2年6月執行猶予4年(求刑:懲役4年)、法人であるオリンパスに罰金7億円(求刑:罰金10億円)の判決を言い渡した。

※飛ばし:会社が保有する有価証券などが値下がりして損が生じた際、グループ外非連結子会社に、含み損を抱えたままの実態よりも高い価格で一時的に売り渡す手法。会社本体は損失を出さず、損を社外に“飛ばす”事に由来している。決算で損失が表面化するのを避ける為、決算期をまたいでの「飛ばし」が多かった。バブル崩壊後の1990年代前半に相次いで表面化して問題となった。現在、粉飾決算の一つとして金融商品取引法で禁じられている。

【物語】

日本企業史上、最長期間に渡った最大の粉飾決算事件から

私たちは何を読み解くのか――

マイケル・ウッドフォードは不安で震えていた。取締役会に出席した石のように固い表情の役員達を見た瞬間、彼は待ち構えている自分の運命を悟った。2011年10月14日、ウッドフォードは、オリンパス株式会社の会長である菊川剛と、取締役員会で望みのない対決に臨んだのだった。役員会は、全員一致でCEO兼社長であるウッドフォードの解任を可決。一言も発言を許されないまま、たったの8分間で役員会は終わった。日本有数の大企業の一つとして、創業100年近くもの歴史を誇るオリンパスで何が起きたのか? 1300億円にも及ぶ不可解な支出と企業買収工作は、海外メディアも巻き込み、世界を揺るがす経済スキャンダルの一つとして新しいページを刻むことになる。ウォール・ストリート・ジャーナルが<日本企業史上、最長期間に渡った最大の粉飾決算事件>と呼んだ事件とは何だったのか?

「日本人はなぜサムライとイディオット(愚か者)がこうも極端に分かれてしまうのか」

マイケル・ウッドフォード

samurai_and_idiots_still8_R